私の実家では、母が14歳になる雌猫と一緒に暮らしています。
猫の14歳といえば人間でいう70代前半で、まさしく“同世代”の両者。互いに気心も知れていておおむね健康。ところがここのところ、母の方がちょっとしんどくなってきたようなのです。
先日、久しぶりに実家に顔を出したときのこと。母と猫は“まったり”とした時間を共有していました。去年までは私が帰れば、玄関までお迎えにきてくれたのに、今年はリビングのソファからピクリとも動こうしない猫。仕方がないので私の方から近寄って、あごの下をなでなですると「ニャ~」とひと声あげて、のそりのそりとリビングを出て行きます。
その後ろ姿に目をやりながら「歳とったなぁ…」とつぶやく私に「歳をとったのは私の方よ」と、いつになく弱気なことを言う母。「どうしたの?」と聞くと「実はね…」と、告白が始まったのです。
母が言うには、近ごろ、毎日の掃除機がけが本当にしんどいのだと。
重たい掃除機を引っ張り出してきて、コードをあっちこっちにひっかけながらゴロゴロ引きずりまわすのがとっても疲れる。とくに階段なんかはお手上げで、仕方なくコロコロで猫の毛だまりをとっているのだとか。「毛が抜け替わる春先が心配よ」と、母は私にこぼします。
そうだったんだ…と、さっきまで猫が陣取っていたソファの隙間に挟まった抜け毛を見て、ちょっぴり寂しくなった私。そこで私は心に決めたのです。「使い勝手のいいコードレスクリーナーをプレゼントしてあげなくちゃ!」と。
クリーナー探しのポイントは、軽くて十分なパワーがあること。ただ、いくら軽くても、わが家の狭い階段で長いノズルで使いまわすのは母には無理。なので、用途に応じてノズルのタイプを付け変えられる多機能性も必要。そんな条件をすべて適えていたのが、±0のコードレスクリーナーでした。
後日、実家を訪ねると、相変わらず猫はソファに寝そべり悠々自適。いっぽう母はというと、またまた何やら深刻な顔つきで「実はね…」と、いつかのように切り出したのです。「ここのところお風呂に入るとき洗面所が寒くってねぇ。やっぱり歳よねぇ…」。
ちょっと、ちょっと、いったいなんなの? もしかして、これって新たなおねだり?